アンチセンス核酸の合成

アンチセンス核酸は核酸医薬に用いられる短鎖(12mer~30mer)のオリゴヌクレオチドで、近年ではラボでもオリゴヌクレオチドの自動合成機などで簡便に合成することが可能です。

しかし一方で天然型のDNAやRNAモノマーで合成したオリゴヌクレオチドは生体内では核酸分解酵素で容易に分解されてしまうため、これらヌクレアーゼに耐性を持たせるために様々な修飾が施されます。

アンチセンス核酸の機能を維持しつつ、どのように核酸にヌクレアーゼ耐性を付与すればよいのでしょうか。

様々なアンチセンス核酸の化学構造

アンチセンス核酸は鎖を構成する核酸分子の種類や分子間の結合の種類、また末端に付加する修飾(リガンド)などによってその機能を獲得しています。以下にアンチセンス核酸の化学構造を説明します。


RNA分解型(Gapmerアンチセンス)

アンチセンス核酸は、ターゲットとなるmRNAにハイブリッドするDNAオリゴヌクレオチドで、合成も簡単に思えますが、実際in vitroやin vivoではヌクレアーゼによる分解で活性が急速に失われます。

  • RNase Hによる認識を損なわず
  • ヌクレアーゼによる分解に耐性で
  • 生理的に毒性の低い
  • 方法による修飾が試みられ、

  • DNAオリゴヌクレオチドのホスホロチオエート化(S化)
  • 5’, 3’末端にLNAや2’OMe, 2’MOEなどの修飾バックボーン核酸部位の導入
  • がヌクレアーゼ分解を防ぎ、かつRNAとの結合能を向上させることが分かりました。

gapmer

Fig. ギャップマー(模式図)

このようにS化DNAを5’および3’側3~5塩基の修飾核酸、LNAや2’OMe, 2’MOE核酸で挟むように合成したギャップマーは、配列中央部に位置するS化DNA部位がRNase Hに認識され、両端のウイング部が5’, 3’からのヌクレアーゼに対する分解を緩和し、RNAへの親和性も強化されるため高いアンチセンス効果が得られます。


スプライシング制御型(Mixmerアンチセンス)

このタイプのアンチセンス核酸は、スプライス部位に強く結合してスプライシングに関わるタンパク質の結合を阻害し、エキソンスキッピングを促すことで作用するものです。

そのため、ターゲットに強く結合すればよく、切断する必要はないため、RNase Hに認識されないモノマーを混ぜた15~30塩基のミックスマーか、DNAを用いないS化オリゴとして合成し、ターゲットにハイブリッドさせます。

2'-OMe、2’-MOEなどの人工核酸を用いて合成したもの、DNA、LNA(または2'-cEt BNA)を混ぜてホスホロチオエート化したミックスマーや、モルフォリノ核酸で合成したものなどが多く使用され、ターゲットへの親和性が高くヌクレアーゼ耐性能の高い塩基が使用されます。

mixmer

Fig. ミックスマーアンチセンスとモルフォリノ核酸(模式図)


サービスのご案内

ニッポンジーンマテリアルではアンチセンス核酸に使用される修飾核酸を用いたオリゴヌクレオチドやsiRNAの合成を行っています。核酸研究・配列スクリーニング・条件検討にご使用いただけます。
核酸医薬品研究・開発用オリゴヌクレオチド合成サービス


ヘテロ二本鎖核酸

ヘテロ2本鎖核酸(heteroduplex oligonucleotide:HDO)は、siRNA、アンチセンスオリゴ(ASO)に続く、第3の核酸医薬モダリティとして注目されているオリゴヌクレオチドです。

HDOは、標的遺伝子の転写産物に結合するアンチセンス核酸と、それに相補的に結合したキャリア鎖(RNA)より構成されています。

転写産物に結合する鎖はホスホロチオエート化DNAオリゴやギャップマーをご利用いただくことが可能です。それに相補するような形でキャリアー鎖であるRNA鎖を合成します。

効果のある鎖長については様々なバリエーションがあるようですが、DNA鎖の方はRNase Hによる認識がされるよう設計します。

キャリア鎖に細胞内へのデリバリーに必要なリガンド(例:tocoferol, cholesteryl, GalNAcやペプチド、抗体など)を結合させることが可能です。この結合はアンチセンス鎖の活性には影響を与えません。


サービスのご案内

ニッポンジーンマテリアルではヘテロ2本鎖核酸(HDO)の合成を行っています。アカデミア研究者が研究用途で使用する行為についてレナセラピューティクス株式会社からライセンスを受けておりますので、核酸研究・配列スクリーニング・条件検討にご使用いただけます。
アカデミア限定ヘテロ2本鎖核酸(HDO)合成サービス



FAQ

アンチセンス核酸(ASO)は HPLC 精製する必要がありますか?

アンチセンス核酸(ASO)は通常、長さが短いため HPLC 精製を必要としません。標準的な脱塩精製のみでも、ほとんどのアンチセンス用途に適しています。 しかしながら配列の短さに反比例してオフターゲット効果の可能性が上昇し、実験結果の解釈が複雑になる場合があります。完全長の純度を高めたい場合はカートリッジ精製又はHPLC精製をご検討ください。 生体に使用する場合は、より高純度のオリゴヌクレオチドが必要となることがあります。このような場合、合成・精製中に持ち越される可能性のある残留化学物質による毒性を軽減するために、in vivo HPLC 精製(カウンターイオンを全てNa+塩に交換)をお勧めいたします。

ノックダウン実験ではどのくらいの濃度のアンチセンス核酸を使用すればよいですか?

最適な ASO 濃度は、細胞の種類や生物、使用する核酸の種類および送達方法などに依存します。 カチオン性脂質を使用して人工核酸を用いたアンチセンス核酸(ASO)をHela細胞に送達するには通常、1 ~ 30 nM の範囲の ASO を使用します。特定のターゲットとシステムに応じて、用量を最適化していただく必要があります。 詳しくは弊社までお問い合わせください。


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もっと詳しく:アンチセンス核酸の設計


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